練馬区早宮に、大きなケヤキの木々に囲まれた一角があります。

住宅が立ち並ぶ街の中に、まるで昔の農家の屋敷林がそのまま残されたかのような場所。ここは内田邸の屋敷林です。


そして、本邸の裏手には、築150年を超える古民家を活用した「けやきの森の季楽堂(きらくどう)」があります。

古い建物や緑が残るだけでなく、現在は人々が集まり、食事や買い物、交流を楽しめる場所として活用されています。

今回は、2026年10月に開催されていた「夜パンカフェ」を訪ねてきました。
大きなケヤキに囲まれた内田邸

まず目に入るのが、ひときわ大きなケヤキの木です。

屋敷の一帯には大きな木々が立ち並び、まさに「屋敷の森」と呼びたくなるような景観が広がっています。

周囲には住宅が建ち並んでいますが、この一角には豊かな緑が残されています。街の中に、こうした場所があることに驚かされます。
内田邸の裏手にあるのが、古民家を活用した「けやきの森の季楽堂」です。
古民家を活用した「けやきの森の季楽堂」
けやきの森の季楽堂は、築150年を超える古民家を活用したイベント・交流スペースです。
古い建物を残すだけでなく、さまざまなイベントの会場として利用されているのが特徴です。
パンの販売やマルシェ、音楽イベントなどが開催され、地域の人々が集まる場所になっています。

今回訪れた日は、「夜パンカフェ」が開催されていました。
食と社会課題をつなぐ「夜パンカフェ」

夜パンカフェは、パンの販売や食事を楽しみながら、人と人とのつながりを生み出すソーシャルカフェです。
その背景にあるのが、食品ロスの削減や、さまざまな事情を抱える人たちが働き、社会とつながる機会をつくる取り組みです。

「夜のパン屋さん」は、2020年にスタートした活動。パン屋さんで売れ残りそうなパンを預かって販売することで、まだおいしく食べられるパンを廃棄せずに次の人へ届けています。
この取り組みは、料理研究家の枝元なほみさんが立ち上げたものです。枝元さんは2025年2月に亡くなられましたが、食を通じて人と社会をつなぐ活動は、現在も受け継がれています。

夜パンカフェも、こうした取り組みから広がった活動の一つです。
会場には、社会課題の解決や環境への配慮を大切にする出店者も参加しています。
フードロスを減らすパンの販売

まず目に留まるのが、夜のパン屋さんによるパンの販売です。
まだ食べられるパンを必要とする人へ届けることで、食品ロスの削減につなげています。
パンを買うという普段の買い物が、食べ物を無駄にしない取り組みへの参加にもなります。
フリーマーケットや「ビッグイシュー」

会場にはフリーマーケットの出店もありました。

また、ホームレス状態にある人などの仕事づくりを目的とした雑誌「ビッグイシュー日本版」も販売されています。
ビッグイシューは、雑誌の販売を通じて、販売者が収入を得て自立を目指す仕組みを持つ取り組みです。

こうした活動を身近な場所で知ることができるのも、夜パンカフェの特徴です。
牛ふん堆肥を活用する「さかよりファーム」

環境や農業に関わる出店者も参加していました。

その一つが、牛ふん堆肥を活用した循環型の農業を目指す「さかよりファーム」です。
資源をできるだけ無駄にせず、自然の循環を生かして農業を営む。食べ物を買うだけでなく、その背景にある生産や環境について考えるきっかけにもなります。


会場には新鮮な野菜なども並び、社会課題に関心がある人はもちろん、普段の買い物や食事を楽しみたい人も気軽に立ち寄れる雰囲気でした。

社会貢献という言葉だけを聞くと、少し敷居が高く感じるかもしれません。

しかし、ここではパンを買ったり、野菜を選んだり、出店をのぞいたりすることが、自然とさまざまな活動に触れる機会になっています。
いよいよ古民家の中へ

出店を楽しんだ後は、古民家の中へ。
建物の中に入ってみると、思っていた以上に広く、ゆったりとした空間が広がっていました。

この日は10月とは思えないほど暑い日でしたが、蔵の中に入ると、外の暑さが和らいで感じられます。

壁に目を向けると、土壁にはわらが練り込まれていました。

昔ながらの建築には、現代の住宅とは違う素材や工夫が使われています。こうした細部を眺めているだけでも、建物が重ねてきた年月を感じます。

そして、何より目を引くのが立派な梁です。


太く、存在感のある梁が建物を支えています。長い年月を経た木材が今も建物を支えている様子には、思わず見入ってしまいました。


室内では食事を楽しむこともできます。
古民家というと、昔の建物を見学する場所というイメージがあるかもしれません。しかし、ここでは建物の雰囲気を感じながら、食事をしたり、人と話したりして過ごすことができます。


こんな素敵な古民家が、練馬の住宅街に残されていたとは。

普段の街歩きでは気づかずに通り過ぎてしまいそうな場所ですが、実際に訪ねてみると、その魅力をあらためて感じます。
人と人が自然につながる場所

夜パンカフェは、単にパンや野菜を買うためのイベントではありません。

食品ロスの削減、働く機会づくり、雑誌販売による自立支援、環境に配慮した農業など、さまざまな取り組みが一つの場所に集まっています。


また、夜パンカフェは、誰もが気軽に集まり、交流できる場を目指しています。

こうした場所では、社会課題について詳しく知らなくても、まずはパンを買ってみる、食事を楽しむ、出店者と話してみる、といった小さなきっかけから関わることができます。

古民家という昔からの建物が、現代の社会課題に向き合う人たちの活動の場になっている。そこにも、この場所ならではの面白さがあるように感じました。
帰りには、お稲荷さんにもご挨拶

帰り際、建物の脇にあるお稲荷さんにもご挨拶しました。
大きなケヤキの木々に囲まれた屋敷林、長い年月を重ねてきた古民家、そして、そこに集まる人々。

練馬区早宮に残るこの一角には、昔から受け継がれてきた風景と、現代の新しい活動が共存していました。

古い建物や緑に興味がある方はもちろん、おいしいパンや野菜を探している方、地域のイベントを楽しみたい方にもおすすめしたい場所です。

次回の夜パンカフェが開催される際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
けやきの森の季楽堂

所在地:東京都練馬区早宮3-41-13
公式サイト:https://www.kirakudow.jp/
※夜パンカフェの開催日や出店内容は変更される場合があります。訪問前に公式サイトなどで最新情報をご確認ください。




