土地開発と白子の湧水〜武蔵野台地から染み出る湧水の行方〜

白子一帯には武蔵野台地を白子川が削ってできた岸壁から豊富な湧水がわき出る場所かいくつもあります。

しかし、その多くは現在都市開発の流れの中で姿を変え、中には消え去ってしまうものもあります。

白子の湧水群の今を追ってみました。

白子の湧水群

失われた湧水

かつて百崖荘という料亭があり、豊富な湧水満たされた池には大きな鯉が悠然と泳いでいたそうです。

現在はマンション建設に伴い崖がコンクリートで覆われ、湧水は完全に塞がれてしまっております。

都市開発と湧水の今を象徴する事例のように感じます。日量180トンの湧水は今は影も形もありません。

HONDA前の湧水(白子の滝)

HONDA前の湧水は今まさに岐路に立たされています。

こちらは2025年1月頃の様子ですが、崖から豊富な湧水が流れ出ています。

サワガニやカワニナもいる綺麗な清流で、クレソン自生しています。

2025年2月下旬頃から建物の建設が予定されているようで、検査が行われています。流れには無造作に石が放り込まれ、サワガ二もきっと窮屈に感じているに違いありません。

滝坂

滝坂も現在帰路に立たされています。かつては豊富な湧水を誇り、坂には水があふれ出ていました。

しかし、いまでは湧水の姿は見えません。小島邸が大事に守ってきた小島家湧水ですが、マンション開発が行われるそうです。

湧水はどうなってしまうのでしょうか。何かうまいことマンションと共存する方法はないのでしょうか。

守られている湧水

富澤湧水

富澤湧水は地域のNPOの方々が中心となって保全活動もされています。

熊野神社

熊野神社の本殿の裏手には池がありまして、崖から豊富な湧水が湧き出ております。かつては、この地で日本ではじめての養殖がおこなわれたとか。

地福寺

地福寺も非常に豊富な水量を誇る湧水があります。錦鯉が気持ちよさそうに暮らしています。

このお寺門前にかつては池のある邸宅があり、そこに一時期清水かつらさんが住まわれていたとか。

大坂の森

大坂の森も公園として整備されており、湧水が小川となっています(現在崖面を整備中)。ただ、以前は沼のような池があったり、小川も長かったりしたのですが、埋め立てられて住宅地となってしまいました。そのため、現在残っているのは宅地開発の波にさらされなかった部分ということかもしれません。

番外編

もともと板橋区には武蔵野台地の崖先を中心に湧水が出る場所が多くあり、生活用水や宗教等と密接に関係し、地域の重要な一部でした。しかし、今ではその多くが姿を消しています。

不動の滝

dig

不動の滝は赤塚溜池公園のそばにある崖面から水が滲み出る場所です。かつては滝行をするほどの流量があったそうですが、近隣の土地開発などもあってか、今では弱いシャワー程度の流量しかなくなってしまっています。

不動の滝の武蔵野台地寄りの場所には今も崖先から湧水が出ていたりします。

また、近隣では乗蓮寺さんの池や赤塚溜池公園なども一定湧水が利用されているのではないかと考えられます。

お役立ちリンク

百涯層をはじめとしたかつての白子の湧水の情報がまとめてあります。貴重な資料です。

熊野神社の紹介です。

清水かつらさんが住まわれていた白子のお家を探してみました。

白子の地の旧家として多くの遊水地を含む土地を有していた富澤家に関する記載もあります。湧水は旧家が守って下さっていたのかもしれませんね(相続などのタイミングで売却されると、開発されることになります)。そこで、行政などが保全に動くこともありますが、なかなかすべてを守り切るのは難しいのかもしれませんね。

この記事を書いた人