東武東上線「ときわ台駅」。閑静な住宅街が広がる北口ロータリーから歩いてわずか2、3分。そこに、本好きなら一度は訪れたい隠れ家のような空間「本屋イトマイ」があります。

扉の向こうは、静寂が支配する別世界

1階の入り口にある扉には、「静かに扉を締めてください」という一言。 その言葉が、これから始まる時間のプロローグのように感じられます。階段を上り2階へ足を踏み入れると、そこには外の喧騒を完全に遮断した、ひっそりと、それでいて温かい空間が広がっていました。

憧れの「秘密基地」がここにある

店内は、左手にカフェスペース、右手に書店スペースと分かれています。 アンティーク調の家具と、活き活きとした緑、そして落ち着いた茶色の枯れ葉が混ざり合う植物の配置は、まるで静かな森の中に迷い込んだかのよう。


席を選ぼうと見渡すと、「中二階」になったスペースを発見しました。 靴を脱いで上がれば、そこにはビーズクッションと三角形の机。子供の頃に夢見た「秘密基地」そのものの空間に、思わず心が躍ります。クッションに身を預け、目の前の本を手に取れば、もうここから動きたくなくなるほどの心地よさです。
地域の名店とつながる、こだわりのメニュー

カフェメニューも充実しており、コーヒーは浅煎りから深煎りまで選択可能。長時間滞在を楽しむ方のために、2杯目以降が100円引きという心遣いも嬉しいポイントです。

特筆すべきは、食事メニューに見える「地域とのつながり」。
- トースト: 上板橋「コパンモンマルトル」
- パン盛り合わせ: 下赤塚「パン工房まさもと」

今回は「中煎りコーヒー(550円)」と「しらすトースト(950円)」をいただきました。サクッとしたパンの食感としらすの塩気は、読書で少し疲れた頭を優しく癒してくれます。
本棚を通してオーナーの「頭の中」を旅する

注文を待つ間、書店スペースへ。 ここの本棚は独特です。色別、ジャンル別、さらには金庫の中に入った重厚なコーナーまで、オーナー独自の「法則」で並んでいます。


話題の直木賞受賞作『カフェーの帰り道』を探して、緑色の背表紙を目印に棚を巡ること5分。結局見つからずオーナーに尋ねると、「人気で入荷待ち」とのこと。「解なし」という結末さえも、この場所では一つの楽しい体験になります。

本棚を眺めていると、まるでオーナーの頭の中を覗き、無言の対話をしているような不思議な感覚に陥ります。
最後に交わした、小さな「共通点」

お会計の際、ふと目に留まったのは「オードリーのオールナイトニッポン」のステッカー。 「ラジオ、聴かれるんですか?」と尋ねると、「そうなんです、作業の合間に」とはにかむオーナー。

交わした言葉はわずかでしたが、選書を楽しみ、美味しいトーストを頂き、最後に少しだけ趣味を共有する。それだけで、店を出る頃にはすっかりこのお店とオーナーのファンになっていました。
「イトマイ」という名に込められた、贅沢な余白

店名の由来は、別れ際の挨拶「お暇(いとま)します」に含まれる、「暇(いとま)」という言葉にあります。
現代を生きる私たちにとって、時間は常に何かに占有されています。仕事という「オフィシャル」な時間、そして家事や育児といった「プライベート」な時間。そのどちらでもない、宙に浮いたような「自分自身のためだけの空白」。それこそが、オーナーの考える「いとま」の本質です。
日常の喧騒からそっと身を引き、自分を解き放つこと。 静かな空間で一冊の本を選び、熱い珈琲が喉を潤す感覚に身を委ねること。
「本屋イトマイ」は、そんな風に「心に静寂を浸透させるための場所」でありたいという願いから誕生したそうです。

忙しい日々の句読点として。あるいは、現実の世界へ戻るための優しい助走として。 ここを訪れる人は皆、扉を閉めた瞬間に、自分だけの豊かな「いとま」を手にすることができるのかもしれません。
| 店名 | 本屋イトマイ |
| 創業 | 2019年3月 |
| 住所 | 東京都板橋区常盤台1-2-5 町田ビル 2階 |
| アクセス | 東武東上線「ときわ台駅」北口より徒歩約2分 |
| 営業日・営業時間 | SNSをご確認ください。 X(旧Twitter)/ Instagram |
| リンク | https://books-itomy.com/ |



