2026年1月、新年の寒空の下、全国のファンシーショップや文具店には今もなお、お目当てのシールを求めて奔走する親子の姿がある。2025年の流行語大賞にノミネートされた「平成女児ブーム」。その熱狂の象徴である『ボンボンドロップシール(通称:ボンドロ)』は、今まさにブームの最高到達点(ピーク)に達している。

開発者がこだわった「2層の奥行き」が大人を動かした

令和のボンドロブームを爆発させたのは、株式会社クーリアのデザイナー陣が「子ども時代の記憶」を形にした、徹底的なこだわりだった。 既存のシール技術を応用しつつ、「2層印刷」によって生まれた物理的な奥行きと、指先に伝わるぷっくりとした質感。それはもはやシールの枠を超え、本物のドロップのような輝きを放つ「宝物」となった。

このクオリティが、かつてシール帳を宝箱にしていた20〜30代の「元・女児」たちの購買欲を直撃。2024年末にサンスター文具との共同開発で「ディズニー」や「サンリオ」といった強力な版権キャラクターが登場したことで、大人の資金力による「大人買い」が加速したこともあり、2025年11月末には累計出荷1300万枚という驚異的な数字を叩き出した。
供給の波と、加熱する「ボンドロ難民」の疲弊
しかし、この頂点ともいえる熱狂の裏側で、少しずつ空気感が変わり始めている。 現在、最も大きな課題となっているのが、需要と供給のアンバランスだ。




- 供給の多様化: クーリア製の純正ボンドロは依然として入手困難で、入荷即完売の状況が続いている。しかしその一方で、中国製を中心とした模造品が商店街などに溢れ始め、「BONBON DROP」の名を冠した類似品が容易に手に入るようになった。また、ブームを牽引してきた「らぶぶのお尻シール」や、その派生である「お腹シール」「肉球シール」も供給が追いつき始め、街中で見かける頻度が格段に上がっている。
- 「ボンドロ疲れ」の蔓延: 2025年末からこの正月にかけ、ブームは極致に達した。子供の願いを叶えるため、LINEグループを駆使して在庫情報を追いかけ、街中を駆けずり回る「ボンドロ難民」の親たちが急増。この白熱しすぎた争奪戦に対し、コミュニティ内では「ボンドロ疲れ」とも呼べる心理的な疲労感が漂い始めている。

「高レート」が手帳を埋め尽くした後の変化


シール交換の現場にも、微妙な変化が生じている。 かつては「高レート」のキャラコラボシールを持っていることが、公園や習い事でのコミュニティにおけるステータスであり、羨望の的であった。しかし、熱心な交換や親の努力によって、多くの子の手帳にそれらが行き渡り始めた。


「誰も持っていないからこそ価値がある」という希少性が薄れ、みんなが同じシールを持ち始めたことで、一部の子供たちの間では「交換の面白味」が以前より少なくなってきているという声も聞こえ始めている。これが、熱狂のピークから緩やかな下降線へと向かう一因になると考えられる。
コミュニケーションから「日常のデコレーション」へ

平成のシールブームは約5年で落ち着きを見せた。令和のブームも2年が経過し、いま最大のピークを迎えている。 今後は、交換という「イベント」の熱量は少しずつ落ち着きをみせ、ボンドロ本来の姿である「お気に入りの持ち物を飾る高機能なデコレーションツール」としての利用が定着していかもしれない。

現在もなお、発売されれば即売り切れるという熱狂的な人気は続いている。しかし、供給の安定とユーザーの心理的飽和が重なり、この熱狂もこれから少しずつ、緩やかに「日常」へと着地していくのかもしれない。

