1992年広島生まれ。かつて吃音(きつおん)に悩み、それを自らの工夫で克服した経験を持つ彼女は、学生時代には県内でも名の知れた長距離ランナーとして活躍しました。
現在は東京電力でエネルギー政策の最前線に身を置きながら、板橋区を拠点とする市民団体「asITA25(あしたニーゴー)」を立ち上げ、地域の課題解決と政治参加を呼びかけています。
2025年の東京都議会議員選挙での落選を経て、彼女が今、板橋の街で見つめているものとは。

「この流れを止めない」——衝撃から決意へ

船本さんと政治との出会いは、驚くほど最近のことでした。広島県東広島市で幼少期を過ごした彼女にとって、政治とは「自民一強」の象徴であり、どこか遠い世界の出来事。
しかし、2024年の東京都知事選で石丸伸二氏(同じ広島出身)が「広く国民の政治参加を促すとともに、地域の活性化を進める」という目標に向け、既成政党に頼らず躍進する姿が、彼女の価値観を根底から揺さぶりました。
「自分の頭で考えて選挙に行くことの大切さを学び、強い衝撃を受けました。それと同時に、『この新しい政治の流れを止めたくない。自分も一歩を踏み出したい』と心から思ったんです」
その想いに突き動かされ、2025年1月、「再生の道」の候補者公募に応募。石丸氏との面接を経て、新人候補として都議選への挑戦が始まりました。

1万4千票の重みと、突きつけられた「地域の壁」

2025年6月22日。投開票日、船本さんはトライアスロンの大会に出場していました。深夜3時に目覚め、目にしたのは「再生の道、全敗」という見出し。
彼女が獲得した14,096票は、新人としては決して少なくない数字でしたが、当選ラインには届きませんでした。
「石丸さんが都知事選で得た板橋区内の票の半分が自分に投票してくれれば当選できると高を括(くく)っていたかもしれません。でも、板橋の方々に『船本がこの街のために何をしてくれるのか』を十分に伝えきれていなかった。その反省が今の活動に繋がっています」

「asITA25」——板橋の明日を、25人の志と共に

落選後、船本さんは組織を離れましたが、そこで共感した「広く国民の政治参加を促すとともに、自治体の自主性・自立性を高め、地域の活性化を進める」といった熱い志は、今も彼女の中に脈々と生き続けています。その想いを板橋という地に根付かせるために立ち上げたのが、地域団体「asITA25(あしたニーゴー)」です。
この名前には、幾重もの意味が込められています。前置詞の「as」、いたばしの「ITA」、そして発足年である「2025年」。さらに、命名当時のチームメンバーが船本さん+25名だったことから名付けられました。

メンバーが作成したロゴには、板橋区の花である「ニリンソウ」と、船本優月の名に因んだ「月」がモチーフとして描かれています。現在はメンバーも29名に増え、楽しみながら活動の輪を広げています。

主な活動の一つが、街の清掃活動です。 「ゴミを拾うと、そこで過ごす人々の日常や、複雑な地域課題が見えてきます。ゴミの量をデータ化すると、板橋の課題を可視化できるように感じています。最近では、現職の区議会議員の方も活動に加わってくれるようになりました」
2027年、板橋ダブル選挙への挑戦:当選の先にある「真の目的」

船本さんは今、2027年4月に予定されている板橋区長選挙、および区議会議員選挙の「ダブル選挙」を見据えています。ここで彼女が描くのは、単なる議席の獲得ではなく、「asITA25」というチームで挑む新しい政治の形です。
- 船本優月(責任者):板橋区長選挙へ 立候補を一つの強力な「手段」として視野に入れています。当選はもちろん目指しますが、その上位目標に掲げるのは「区民に選挙を楽しんでもらうこと」「区政への興味を喚起し、投票率を上げること」です。
- asITA25メンバー:板橋区議会議員選挙へ 「政治を身近なものと捉え、板橋に根を張って活動したい」という志を持つメンバーを、区議会議員として輩出すること。これこそが、船本さんが今最も力を注ぎたい「個人の野望」でもあります。

彼女が「asITA25」のメンバーと共にこのダブル選挙に挑む背景には、石丸氏が掲げた「広く国民の政治参加を促すとともに、自治体の自主性・自立性を高め、地域の活性化を進める」という目標への共感があります。
「私はリーダーではなく、あくまで『責任者』。asITA25は、私のやりたいことをやるチームではなく、メンバーが各々やりたいことを広げていくチームでありたいんです。区議会議員が区民にとってもっと身近な存在になれば、街は必ず変わります」
かつて石丸氏が語った「ゼロ議席でも勝ち」という言葉の意味を、今、船本さんは深く理解しています。当選することだけが選挙の役割ではない。選挙を通じて板橋区を盛り上げることが、彼女にとっての「勝利」なのです。
最後に:投票所に足を運ぶ、その一歩を

ハーフマラソンを完走したその日の午後に、成増の街頭でマイクを握る。そんなタフな活動を続ける船本さんですが、その政治姿勢は極めてフラットです。 実は前回の都知事選で、彼女は石丸氏ではなく小池百合子氏に投票しています。その事実をYouTubeで発信し「炎上」を招いたこともありますが、彼女の信念は揺らぎません。
「誰に投票するかは、政策や人柄を見て自分自身で判断すべきこと。白紙でもいい、大切なのは自分で考えてアクションを起こすことです。板橋区のみなさんにも、選挙を自分事として捉えてほしい」

「再生の道」という組織からは離れましたが、そこで灯された志は消えていません。高校時代に鍛え上げた健脚は、今も止まることを知りません。 「一歩を踏み出したら、もう止まることはない」 元アスリートの政治家・船本優月の第2章は、板橋の街から、今まさに加速しようとしています。
【船本優月(ふなもと・ゆづき)プロフィール】 1992年広島県生まれ。東京理科大学理工学部卒。東京電力ホールディングス株式会社勤務。2025年東京都議会議員選挙(板橋区選挙区)に出馬し14,096票を獲得。現在は地域団体「asITA25」責任者として活動中。X、Instagram、YOUTUBE。


