冬の冷たい空気の中、板橋の街角から長年親しまれてきた「本を手に取る場所」の灯がまた一つ消えました。しかしその一方で、これまでの書店のあり方を塗り替えるような、小さくとも温かい「新しい灯」が各地で灯り始めています。
惜しまれつつ幕を下ろす、地域の「本の記憶」


板橋区内では、地域に根ざした書店の閉店という、寂しいニュースが相次いでいます。 記憶に新しい2025年12月27日、志村坂上のマクドナルド横で街を見守り続けてきた「書林朝日書店」がその歴史に幕を下ろしました。

振り返れば、2025年は板橋の読書環境にとって、まさに激動の1年でした。
- 8月31日: 再開発が進む高島平33街区の「南天堂書店」が閉店。
- 4月23日: 新板橋駅の「ブックスページワン」が閉店。
- 3月28日: 大東文化大学板橋校舎内の「池上書店」が閉店。

二次流通を支える古本屋も同様です。2025年5月18日に撤退した「ブックオフ下赤塚店」に象徴されるように、大手資本ですら維持が難しい現状があり、板橋区内に残る実店舗は今や数えるほどになってしまいました。
デジタルの波と、揺らぐ「本の聖域」

なぜ本屋の灯は消えていくのでしょうか。 KindleやAudibleといった電子・音声コンテンツの普及に加え、最近では「AI検索が書籍内容の多くを回答してしまう」という、著作権とクリエイティビティを脅かす新たな問題も影を落としています。

また、紙の質感を愛する人でさえ、利便性の高いオンラインショップへと流れる時代。伝統的な書店のビジネスモデルは、まさに存亡の機に立たされているといっても過言ではありません。
再び灯る新しい本屋


しかし、そんな逆風の中でも、板橋には新しいコンセプトを掲げた本屋が誕生しています。これらは単なる小売店ではなく、訪れる人の心に火を灯す「体験の場」です。
- タイムトラベル専門書店 utouto(小豆沢): 2025年11月、地の名主・蓮沼家の家屋を活用してオープン。歴史ある空間で「時を越える」選書を提案し、本を通じた深い旅路を提供します。
- 本屋イトマイ(ときわ台): 2019年のオープン以来、「静謐(せいひつ)」をコンセプトに、本と向き合う贅沢な時間を提供。店主の感性が光る選書と静かな空間が、多くの読書家を惹きつけています。


本の手触り、紙の匂い、そして店主と客が作り出す独特の熱量。ZINE(同人誌)の発表やイベントを通じて生まれる「コミュニティ」としての役割が、これからの書店の生きる道を示しています。
2026年、書店文化は「再始動」の季節へ

書店文化を守る動きは、国や業界全体でも加速しています。 2025年6月、経済産業省が発表した「書店活性化プラン」により、DX支援や無書店地域への出店補助など、具体的な救済策が動き出しました。

そして、この春最大の希望の灯となるのが、2026年3月19日の「三省堂書店神田神保町本店」の復活です。 経済合理性を超え、本の聖地・神保町の象徴として再建されるその姿は、本屋が決して「過去の遺物」ではないことを私たちに勇気を持って語りかけてくれます。
おわりに

慣れ親しんだ街の本屋さんが消えていく寂しさは、容易に拭えるものではありません。しかし、板橋の路地裏で静かに灯った専門書店や、神保町で再び燃え上がる大きな火は、書店文化が今まさに「再始動」していることを物語っています。
本が好きな人はまだまだ多くいます。本の手触り感、本の匂い、本屋での本の出会い。という当たり前のようで特別な体験が、これからも地域に残るといいですね。






