変わりゆく「昆虫公園」と、令和における東京の街と昆虫の新たな付き合い方

東武練馬駅からイオンの脇を抜け、徳石公園方面へと坂を下った先にある「昆虫公園」。

かつてここには鬱蒼とした雑木林が広がり、夜になれば街灯の光をめがけてカブトムシやクワガタが羽音を立てて飛来していました。昆虫や蝶の飼育小屋等も置かれ、昆虫好きな子どもたちの歓声が響く、まさに街の中の「昆虫王国」でした。

しかし時が流れるにつれ、公園を取り巻く環境は大きく変わっていきました。

課題に直面した雑木林と、消えた甲虫たち

近隣住民への落ち葉の飛散、強風による落枝や倒木の危険性、そして害虫やスズメバチの巣の問題——。安全対策や管理責任を果たすため、板橋区による樹木の伐採や大幅な強剪定(きょうせんてい)が進められました。

その結果、かつての豊かな雑木林は姿を変え、子どもたちが憧れたカブトムシやクワガタなどの甲虫は姿を消していきました。公園のシンボルでもあった「昆虫」の存在が希薄になり、「昆虫公園」という名ばかりが残る状況が続いていたのです。

令和の工夫:ネットと地域の手で取り戻す「小さな昆虫王国」

そんな中、地域住民や木田おりべ区議会議員の働きかけを受け、板橋区が新たな取り組みに乗り出しました。

公園内のクヌギなどの樹木を大きなネットで囲い、その中にカブトムシを放流。ネットで作られた特大の「虫かご」の中を覗くと、木のうろに身を寄せるたくさんのカブトムシの姿や、設置されたゼリーに群がる様子を間近で観察することができます。

さらに、木囲いのケースには土が盛られ、幼虫が育つための環境整備も行われています。雑木林から出た落ち葉もただ処分するのではなく、腐葉土としてカブトムシの「ごはん」へと循環していく仕組みが生まれつつあります。

「最近は全然見かけなくなっていた」と話す近隣の昆虫少年たちが、目を輝かせてカブトムシと触れ合う姿が、この公園に再び戻ってきました。

自然そのままの生態系を維持することが難しくなった都市部において、ネットや人工的な環境管理を組み合わせ、行政と地域が連携して昆虫を呼び戻す——。これこそが、令和における「市民と都市の自然」のひとつの答えなのかもしれません。

板橋の緑と昆虫たちのこれから

こうした樹木の管理と環境の変化は、昆虫公園だけの問題ではありません。近隣の西台公園や赤塚溜池公園でも、危険な落枝や倒木を防ぐために多くの木が伐採されており、朽ち木を好む甲虫たちの生息地は確実に狭まっています。居場所を求めて区内を移動する昆虫少年たちの姿も少なくありません。

一方で、新しい試みも芽生えています。赤塚溜池公園や光が丘公園などでは、伐採した木をただ持ち去って焼却するのではなく、公園内にそのまま残して分解させる取り組みが進められています。その結果、「カブトムシやクワガタが増えてきた」という嬉しい声も聞こえ始めています。

豊かな自然のバロメーターともいえる、子どもたちに大人気の昆虫たち。完全に保護された「手つかずの自然」を守ることが難しくなった東京で、安全を守りながらいかに彼らとの接点を作り続けていくか。

試行錯誤を重ねながら変化を続ける昆虫公園の姿は、これからの都市と自然の未来像を静かに問いかけています。

この記事を書いた人

なりチャン

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