2026年9月。今年の夏も、まもなく終わりを迎えようとしている。
記録的な暑さに加え、局地的な猛烈な雨や、これまであまり例のなかった台風の進路など、今年も私たちはさまざまな気象現象に直面した。
8月22日夕方、東京都および埼玉県を猛烈な雨が襲った。
次々と発達した積乱雲が板橋区周辺を通過し、板橋区付近では17時までの1時間に120mm以上の猛烈な雨が解析された。気象庁からは「記録的短時間大雨情報」も発表された。

高島平の街は、あっという間に景色を変えた。
排水が追いつかなくなった道路には雨水が流れ、マンホールから水が噴き出す場所も見られた。アンダーパスなどでは冠水の危険も高まり、人々の通行を阻む。
普段なら何気なく歩いている街が、わずかな時間で「水害の現場」に変わってしまう。
地形が語る、高島平の水害リスク

高島平という土地は、もともと水と深い関わりを持っている。
荒川や新河岸川に近い低地に位置し、南側には武蔵野台地へとつながる台地や崖線がある。
大雨が降れば、周辺から集まった雨水が低地へ流れ込む。

さらに、荒川や新河岸川などの河川の水位が上昇すると、街の中に降った雨水を川へ排水することが難しくなり、内水氾濫のリスクも高まる。

板橋区の水害ハザードマップを見ると、高島平周辺には、荒川が氾濫した場合に3m以上の浸水が想定されている地域が広がっている。
板橋区が示す浸水深の目安では、3mは「2階の軒下までつかる程度」に相当する。

つまり、高島平に暮らす私たちにとって、水害は決して遠い場所の出来事ではない。
現場に見る、住人たちの「知恵と備え」

しかし、実際に街を歩いてみると、長年この土地と付き合ってきた人々の力強い知恵も見えてくる。
高島平団地にある「まるご青果」では、店の床面が周囲より一段高く作られている。
さらに、商品である野菜や果物を地べたに直接置かないようにするなど、水への備えを感じさせる工夫も見られた。

それでも今回の豪雨では、建物の廊下が水浸しになったという。

「夕方からまた降るらしい」

そう囁かれ始める時間帯、団地の入り口には新たな土嚢が手際よく積み増されていた。
過去の経験をもとに、住人たちは日常の延長線上で対策を講じている。
そこには、行政の防災情報だけではなく、実際にその土地で暮らしてきた人たちだからこそ分かる「街の弱点」と「備え」がある。
「これまでの常識」が通じない時代へ

今年の夏を象徴するのは、ゲリラ豪雨だけではない。
8月11日、台風15号は茨城県南部に上陸した。
その後、本州を西へ進むという、過去にはあまり例のない経路をたどった。

気象庁も、台風15号について、日本の東の海上から茨城県に上陸して本州を西に進むなど「過去あまり例のない経路」だったと分析している。
これまで「台風は南から北へ進むもの」「この時期ならこうなる」と考えていた私たちの経験則だけでは、対応しきれない気象現象が起きている。
もちろん、すべての異常気象を一つの原因だけで説明することはできない。

だからこそ重要なのは、「これまで大丈夫だった」という経験だけに頼らず、その時々の気象情報やハザードマップを確認し、自分が暮らす場所のリスクをあらかじめ知っておくことではないだろうか。
大雨の街で聞こえた、ひぐらしの声

ふと耳を澄ますと、猛烈な雨の激しい音の隙間から、ひぐらしの鳴き声が聞こえてきた。
雨に打たれながらも、木々の中から響いてくる小さな声。
その鳴き声を聞きながら、ふと考えた。

私たちが暮らしている街も、自然の中にある。
普段は道路があり、建物があり、電車が走り、商店が営業している。


しかし、大雨が降れば、その日常は簡単に姿を変える。
道路は川になり、マンホールから水が噴き出し、普段は意識しない「高低差」や「水の流れ」が突然、目の前に現れる。
高島平の街を歩いて感じたのは、水害が特別な日の出来事ではなく、「いつもの日常」のすぐ隣にあるということだった。

これからも、猛烈な雨や台風がやってくる可能性はある。
だからこそ、雨が降っていない今のうちに、自宅周辺の浸水リスクを確認する。

避難場所を知っておく。
危険な道路やアンダーパスを把握しておく。
そして、実際に大雨が降ったときには、「まだ大丈夫」と思い込まず、早めに行動する。

自然の脅威を完全になくすことはできない。
けれど、知ること、備えること、そして早めに動くことはできる。
高島平の街に降った一度の猛烈な雨は、私たちにそんな当たり前のことを、改めて教えてくれた。









