2025年6月「小治兵窪庚申尊(こじべえくぼ こうしんそん)」について調べてみました。

「小治兵窪庚申尊(こじべえくぼ こうしんそん)」と聞いて、それがどこにあるのかすぐに思い浮かぶ方は成増周辺にお住まいの方でも少ないのではないでしょうか。実は、川越街道を成増から赤塚方面に歩いていくと、成増小学校付近の交差点を過ぎて歩道橋をの裏あたりに「小治兵窪庚申尊(こじべえくぼ こうしんそん)」があります。

「小治兵窪庚申尊(こじべえくぼ こうしんそん)」とは一体どういう意味なのでしょうか。読み解いてみたいと思います。

小治兵窪(こじべえくぼ)

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「小治兵窪(こじべえくぼ)」という名称は、昔の民話に基づいて名づけられました。

昔、この辺りには百々向川(すずむきがわ)が流れており、街道沿いの寂しい場所でした。その川には粗末な丸太橋が架かっており、周囲は草木が生い茂っていたため人目も少なく、丸太橋を渡る人たちが盗賊の被害にあっていました。そうした盗賊の一人に「小次兵衛」という者がおり、彼は悪事を働いことを悔い、罪滅ぼしのために橋を架けたという伝説が残っています。この民話にちなんで、その橋の名前は「小次兵衛橋」、この地域は「小次兵衛窪」と呼ばれるようになったと伝えられています。

庚申尊(こうしんそん)

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日本には古くから「庚申信仰(こうしんしんこう)」がありました。

庚申信仰では、人間の体内に「三尸(じょうし・ちゅうし・げし)」という三種類の虫が棲んでいると信じられていました。60日に一度巡ってくる「庚申(かのえさる)」の日の夜、人が眠っている間に、この三尸の虫が体内から抜け出し、天帝(てんてい)にその人の悪行を報告しに行くと考えられていました。この報告によって、その人の寿命が縮められるとされていました。

三尸の虫が体から抜け出すのを防ぐため、庚申の日の夜は、夜通し眠らずに過ごす「庚申待」という行事が行われました。 庚申待によって三尸の虫の報告を阻止し、寿命が縮まるのを防ぐことで、長寿や健康、そして現世での幸福・繁栄を願うのが、この信仰の主な目的でした。

庚申待は、個人で行うよりも、地域の住民が集まって飲食を共にしたり、話をして夜を明かしたりする共同体的な行事として行われることが多かったため、地域交流の場としても機能しました。庚申待に参加できない人々や、信仰の証として、各地の道端や辻、寺社の境内などに石造りの塔が建てられました。

小治兵窪庚申尊(こじべえくぼ こうしんそん)

つまり、小治兵窪庚申尊(こじべえくぼ こうしんそん)は、「小治兵窪」にある「庚申塔(やご本尊)」という意味ですね。

川越街道沿いにあったため、道行く人々の旅の安全を守る道祖神としての役割も担っていたそうです。

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百々向川(すずむきがわ)はどこへ⁉

この地には百々向川(すずむきがわ)が流れていたのですが、北口ロータリーの再開発の際にアクトホール(西友成増店が入る建物)の建設に伴い川は断水され河川解除してしまったそうです。そのため、現在は百々向川(すずむきがわ)はこの地には流れていないそうです。

ただ、周辺の建物の形状を見ると川が流れていた名残があります

おまけ:「庚申(こうしん)」とは何

庚申を理解するためには、10干12支の説明が必要になります。

10干12支は、古代中国で生まれた暦や時間、方角などを表すための複雑な体系のことで、日本では「えと」として広く知られていますが、本来の「えと」とは、この10干12支を組み合わせた60通りのことを指します。

10干甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)
12支子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)

10干12支の組み合わせ

10干と12支を順番に組み合わせていくと、最小公倍数として60通りの組み合わせができます。これを干支(えと)と呼びます。例えば、

  • 甲子(きのえね)
  • 乙丑(きのとうし)
  • 丙寅(ひのえとら) …

というように続き、60番目の組み合わせは「癸亥(みずのとい)」となります。この60通りの組み合わせがすべて巡ると、また「甲子(きのえね)」に戻ります。この60年で一巡する周期は、還暦の由来にもなっています。

ちなみに、丙午(ひのえうま)に生まれた女性は気性が荒く、夫の命を縮めるという言い伝えがあり、前回の丙午の年であった1966年は極端に出生数が少なかった年でした。2026年に次の丙午が訪れますが、はたして出生数に影響はあるのでしょうか。ただでさえ、出生数が70万人を割り込んだりと少子化が進んでいるので、さらに下がってしまうと、日本の未来が心配になってしまいますね。

庚申とは

庚申は、十干(甲・乙・丙…)と十二支(子・丑・寅…)を組み合わせた干支の57番目にあたる日や年を指します。読み方は「かのえさる」または「こうしん」です。

  • 十干の「庚(かのえ)」: 陰陽五行説では「陽の金」に当たります。
  • 十二支の「申(さる)」: 陰陽五行説では「陽の金」に当たります。

このように、どちらも「金」の要素を持つことから、この日は特に「金気が天地に充満して、人の心が冷酷になりやすい」と考えられていたようです。こうしたことも、庚申信仰において、三尺の虫が体から抜け出す日とされていたことに関係しているのかもしれません。

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