失われゆく板橋の「トカイナカ」:2026年、ついに成増の区民農園がゼロに

2026年1月15日、板橋区の区民農園の募集が始まりました。都心に近い利便性と、畑が広がるのどかな風景が同居する、板橋ならではの「トカイナカ」の魅力。しかし、今年の募集要項には、その風景が静かに、かつ確実に失われつつある現実が刻まれていました。

値上げと減少、揺れる「農」の場

成増農業体験学校。

まず目に付くのは、家計を直撃する負担増です。物価高騰などの影響により、利用料は昨年の5,500円から6,200円(9か月超12か月未満)へと値上げされました。

閉園予定の成増4丁目第3農園。

さらに深刻なのが、農園数そのものの減少です。2025年の26箇所から23箇所へと減少。今回の募集では、成増4丁目第1・第3、そして徳丸5丁目第3といった区画が姿を消しました。

徳丸に残る農園。

特に成増エリアは象徴的です。かつて高台沿いに多くの農園が点在していた成増ですが、今回の募集をもってついに成増の区民農園はゼロとなりました。

地域別にみる「農」の生存率

地域2015年2026年増減残存率
赤塚11110100%
徳丸106▼460%
四葉63▼350%
三園31▼233%
西台・前野町41▼325%
高島平21▼150%
成増30▼30%
合計3923▼1659%

2015年からの11年間で、板橋の農地はどう変わったのか。地域別に分析すると、そのコントラストが鮮明になります。

住宅街の中でも残る赤塚3丁目第二農園。

板橋区の農業の象徴である「赤塚」が意地を見せて100%を維持する一方で、大型スーパーやドラッグストアの進出が目立つ「徳丸」「四葉」は半減。そして、かつての穴場だった「成増」はついに地図から区民農園の文字が消えました(農業学校は残っています)。

なぜ「トカイナカ」は消えるのか

区民農園が減少する背景には、都市農家が直面する厳しい現実があります。

  1. 高額な相続税:評価額の高さゆえ、相続のたびに納税資金確保のための売却を余儀なくされます
  2. 都市部特有の軋轢:耕運機の音や肥料の臭い、砂埃。新しく移り住んだ住民からの「苦情」が区民農園の廃園につながることも少なくありません。
区民農園と住宅が隣接するため砂埃や騒音が問題になることも。

時代の波間に消える風景

赤塚三丁目第1農園跡地に建つ介護付き有料老人施設。

農園の跡地は、アスファルトの駐車場に変わり、老人ホームが立ち、あるいは整然とした戸建ての住宅街へと姿を変えていきます。それは都市の利便性が高まるプロセスでもありますが、土の匂いや四季の移ろいを身近に感じられた「トカイナカ」の情緒が失われる瞬間でもあります。

高島平の抽選会場。

便利さと引き換えに消えゆく、緑豊かな板橋の風景。今年の区民農園の抽選倍率は、例年になく「重い」ものになりそうです。

農園にも出没すると噂の成増の住宅街のアライグマ。

参考:2026年度の区民農園の募集

番号農園名所在区画数前回
倍率
水道物置トイレ
1三園第6三園1-41432.28
2赤塚一丁目第1赤塚1-6362.50
3赤塚一丁目第2赤塚1-33700.89
4赤塚二丁目第1赤塚2-30651.11
5赤塚三丁目第2 赤塚3-34541.65
6赤塚四丁目第1赤塚4-2・9691.00
7赤塚五丁目第1赤塚5-7371.08
8赤塚五丁目第3赤塚5-31490.88無の場合あり無の場合あり
9赤塚五丁目第4赤塚5-26690.88
10赤塚六丁目第2赤塚6-35731.09
11赤塚七丁目第3赤塚7-1961.06
12赤塚八丁目赤塚8-2321.31
13徳丸四丁目第1徳丸4-28551.20
14徳丸五丁目第4徳丸5-30541.22
15徳丸五丁目第5徳丸5-38481.41無の場合あり
16徳丸六丁目第1徳丸6-14・18・19・252401.45無の場合あり無の場合あり無の場合あり
17徳丸六丁目第4徳丸6-47632.49
18徳丸七丁目第2徳丸7-13432.72
19四葉一丁目第1四葉1-26281.40
20四葉一丁目第2四葉1-22271.26
21四葉二丁目第2四葉2-8631.44
22高島平四丁目高島平4-20322.53
23西台三丁目第3西台3-12・221712.47無の場合あり

この記事を書いた人

なりチャン

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