東京23区の北端に位置する板橋区成増では最近アライグマの目撃情報が多く寄せられています。そこで、今回はアライグマが23区でも見られるようになった背景や、もしアライグマに遭遇してしまった時の対策も踏まえて記事にしてみました。
みなさん、アライグマが突然目の前に現れたらどうしますか?
アライグマの目撃情報
5月29日@成増5丁目の坂道

5月下旬に成増5丁目の長い坂の中腹でアライグマが目撃されました。
6月上旬赤塚第二中学校正門付近

6月上旬にもアライグマが目撃され、今度はなんと親子連れでした。3匹の子供を連れています。
成増周辺でもアライグマが繁殖している動かぬ証拠ですね。
生息しそうな場所
アライグマが目撃されているのは成増4,5丁目なので周辺の緑が残る公園や民家等にもしかしたら日中は潜んでいるかも知れませんね。
周辺の公園
アライグマは本来、森に暮らしています。そのため、成増周辺の武蔵野台地の崖線(がいせん)に残る森は格好の寝床かもしれません。
そのため、成増周辺の武蔵野台地の崖線(がいせん)に残る森は格好の寝床かもしれません。最近アライグマが目撃されている地域は成増4,5丁目ですので、「成増四丁目前新田の森」や「成増五丁目公園」、「赤塚ため池公園」等の木の洞、倒木の下、茂みの中などもアライグマの寝床となりえます。
周辺の民家や寺社の屋根裏や床下
都市部に生息するアライグマの格好の住処は、民家です。換気口、軒下の隙間、屋根瓦のずれ、基礎の通気口などから侵入し、断熱材を破ってねぐらにすることが多いです。 特に、人通りの少ない時間帯(夜間)に活動するため、昼間は屋根裏などで休んでいる可能性が高いです。
管理されていない空き家や廃屋は、人目に触れにくく、アライグマにとって安全な寝床となります。 朽ちた建物の隙間や壊れた窓などから容易に侵入できます。成増5丁目辺りには空き家や倉庫などもあったりしますので、気づかないうちにアライグマの寝床になってしまっている可能性もあります。
人里に近い場所にある古い神社仏閣は、隙間が多く、天井裏などが広いため、アライグマのねぐらになりやすいです。 成増周辺にも菅原神社や氷川神社等がありますので、こうした寺社も寝床になっている可能性があります。気づかぬうちに、こうした歴史的建造物に被害が及ぶと、修復にも大きな費用がかかるかもしれません。
なぜ今、地域にアライグマが増えているのか?
現在、アライグマは日本全国で分布を拡大し、現在では沖縄を除くほぼ全ての都道府県で目撃されるようになっています。こうしたアライグマが全国でみられるようになった背景には社会ブームにもなったアニメがあったりします。
ペットとして輸入された個体の野生化
アライグマは本来、北米大陸原産の動物です。1970年代後半に放送されたテレビアニメ「あらいぐまラスカル」の影響もあり、その可愛らしい見た目からペットとして大量に日本に輸入されました。
しかし、アライグマは気性が荒く、飼育が難しい動物です。手に負えなくなった飼い主が飼育を放棄したり、動物園などの飼育施設から逃げ出したりした個体が野生化し、日本各地で繁殖していきました。
日本に天敵がいない
アライグマの原産地である北米には、オオカミやピューマ、コヨーテといった大型肉食動物がアライグマの天敵として存在します。しかし、日本にはアライグマを捕食するような大型の天敵がほとんどいません。そのため、捕食されることなく個体数を増やすことができました。
高い繁殖力
アライグマは一度に5頭ほどの子供を産む高い繁殖力を持っています。天敵がいない環境で、この高い繁殖力が相まって、急速に個体数が増加しました。
アライグマの被害
アライグマの増加は、日本の様々な地域で深刻な被害と影響をもたらしています。主な被害事例と影響は以下の通りです。
農産物や庭先のペットへの被害
アライグマは雑食性で、特に甘いものを好むため、様々な農作物を食い荒らします。イチゴ、ブドウ、スイカ、メロン、トウモロコシ、トマトなどの果物や野菜が特に狙われやすく、収穫前の作物に大きな被害が出ます。被害額は全国で年間数億円に上ることもあります。
庭先で飼育している魚やメダカ、金魚などが捕食される被害もあります。また、場合によってはカメなども食べてしまうそうです。
成増周辺は23区でありながら区民農園もあったりと、トカイナカライフを送れることが魅力だったりしますが、アライグマにとってもそんな環境は暮らしやすいのかもしれませんね。畑で育てたスイカが収穫直前でかじられていたら、犯人はアライグマかもしれませんね。
ゴミの被害
非常に器用な前肢でゴミ袋を破り、生ゴミを食い散らかします。これは衛生上の問題だけでなく、周辺の美観も損ねので、大きな問題となります。
アライグマは夜に町中を徘徊しながら餌をさがしていますので、夜間にゴミを出してしまうと、アライグマがゴミを荒らしてしまい、早朝には一面にゴミが散らかっているということもあるかもしれません。ごみを荒らす生きものはカラスだけではないのですね。
人間への健康被害
アライグマは様々な病原菌や寄生虫を保有している可能性があり、人間やペットに感染症を媒介するリスクがあります。
病名 | 説明 |
アライグマ回虫症 | アライグマの糞に含まれる卵が口に入ると感染する可能性があり、稀に人間に重篤な神経症状や眼病変を引き起こすことがあります。アメリカでは死亡事例も報告されています。 |
狂犬病 | アライグマが狂犬病ウイルスを保有している場合、咬まれたり引っかかれたりすることで感染する可能性があります。狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する非常に危険な病気です。現在の日本では野生動物からの狂犬病発生は報告されていませんが、リスクはゼロではありません。 |
レプトスピラ症 | アライグマの尿に汚染された水や土壌を介して感染する可能性があり、発熱、頭痛、筋肉痛などの症状を引き起こします。重症化すると腎臓や肝臓に影響が出ることもあります。 |
サルモネラ菌、カンピロバクターなど | アライグマの糞にはこれらの細菌が含まれていることがあり、直接触れたり、糞で汚染された食品を摂取したりすることで食中毒の原因となることがあります。 |
SFTS(重症熱性血小板減少症候群) | マダニがアライグマの体表に付着しており、そのマダニに咬まれることで感染する可能性があります。 |
東京都や区の対策

東京23区においてもアライグマに関する相談件数は令和5年度で775件もあり、その数は年々増加傾向にあります。
東京都では、平成25年に「東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画」を策定し、区市町と連携しながら、アライグマ・ハクビシンの捕獲を実施しています。

区部においてもアライグマの防除捕獲件数は令和5年度で151頭に上り、年々その数も増えていることが分かります。

防除実施計画への参加(同意)自治体は計画策定以降順次増加し、現在は46自治体にまで拡大しました。農作物獣害対策事業の実施自治体を含めると、現在では全53自治体のうち50の自治体がアライグマ・ハクビシン対策に取り組んでいます。
23区の中で参加していない自治体は千代田区のみとなりますが、さすがに千代田区にはアライグマはいないのですかね(日比谷公園とか皇居とか、タヌキはいそうですが)。しかし、他の港区や目黒区、渋谷区、新宿区といった都心にもアライグマがいるというのは驚きですね。
アライグマに遭ってしまったら
アライグマを発見しても、決して近づかないこと
アライグマは攻撃的な性格になることもある動物です。特に、子育て中は気が立っていることもあるので、もし遭遇しても近づかないようにしましょう。
また、病原菌や寄生虫を持っている可能性もありますので、絶対に素手で触ったり、追い詰めたりしないでください。
自治体や専門業者に相談する
アライグマの捕獲や駆除は、「鳥獣保護管理法」によって厳しく制限されています。個人が許可なく捕獲することはできません。
アライグマを目撃された場合は、お住まいの自治体(環境課、農政課など)の担当部署に相談してください。多くの場合、箱わなの貸し出しや、専門業者による捕獲支援を行っています。
自治体の対応が難しい場合や、より迅速な解決を求める場合は、害獣駆除の専門業者に依頼することも検討しましょう。