板橋区宮本町にある「板橋イナリ通り商店街」を訪ねました。 都営三田線・板橋本町駅から徒歩約6分。中山道(国道17号)から、地域の鎮守である「清水稲荷神社」へと続く旧道沿いに広がる、昭和の風情を色濃く残す味わい深い商店街です。

時代の流れや生活スタイルの変化に伴い、少しずつシャッターの閉まったお店が増えている現状もありますが、そこには今も地域に深く愛される温かい営みがありました。

🐢 カメさんが迎える小さな名店、地元に愛される「喫茶 フォルテシモ」へ

商店街の中ほどを歩いていると、一軒家の一階部分にあるお洒落でこじんまりとしたお店が目に留まります。

こちらが今回お邪魔した「喫茶 フォルテシモ」さんです。 入り口では、可愛いマスコットのカメさんがお出迎えしてくれます。


店内はカウンター席とテーブル席が4席。午後のひとときに訪れると、地元の顔なじみの方々が楽しそうに言葉を交わす、なんとも温かい光景が広がっていました。

フォルテシモさんは、2025年にテレビ番組「飯尾和樹のずん喫茶」でも放映された話題のスポット。注文したこだわりの珈琲をいただくと、カップにはしっかりとあの「ずん喫茶」の文字が。 地元のコミュニティの拠点として息づくお店で、ゆっくりと落ち着いた時間を過ごさせて頂きました。
🛒 時代の変遷を見る、旧道商店街のリアルな足跡

清水稲荷神社の門前町、そして旧中山道と富士見街道をつなぐ旧道として栄えたこの商店街。 昭和25年(1950年)に「板橋イナリ通り商励会」として発足し、最盛期には60軒以上もの店舗が軒を連ねていたそうです。

当時は八百屋、魚屋、肉屋が並び、夕方ともなれば「道を歩くのも大変なほどの人出」だったといいます。かつて3軒もあったという中華料理店も、今は1軒が暖簾を守るのみとなりました。

最近では、昭和25年創業の老舗で「かのこパン」が板橋のいっぴんにも選ばれていた「ホームベーカリー木村屋」さんや、「鈴木美容室」さんが閉店。


少しずつ寂しさが広がる背景には、地域の買い物の選択肢の変化があります。

かつて清水稲荷神社の裏手に大型スーパー「コモディイイダ」ができた際、商店街の生鮮食品店などは大きな影響を受けました。

しかし現代では、そのコモディイイダも富士見町に誕生した「ライフ」との激しい顧客獲得競争に直面しています。

大型店舗同士が火花を散らす中、かつてのように「毎日夕方に商店街へ買い物に行く」ライフスタイルから、大型冷蔵庫にまとめ買いする時代へ。モータリゼーションや買い物の利便性による人流の変化が、商店街の風景を少しずつ変えています。
🍗 戦後からこの地で。店頭で交わされる「昔ながらの会話」

それでも、この街には変わらない、変えたくない温もりがあります。 商店街とともに歩んできた、戦後創業の鶏肉専門店「鳥弘(とりひろ)」さんに立ち寄りました。

「板橋のいっぴん」にも選ばれた名物「ロールチキン」は残念ながらこの日は売り切れでしたが、夕飯のおかずに手作りの「焼鳥」を購入。
店頭では、お店の方が昔からの常連さんと笑顔で世間話をされていました。戦後の活気溢れる商店街の姿を知る人たち、今もこうして言葉を交わし、繋がっている。これこそが個人商店、外部のスーパーにはない商店街が持つ一番の魅力だと実感します。
⛩️ 街の歴史を見守り続ける、宮本町の鎮守さま

商店街の先にある「清水稲荷神社」へと足を延ばしました。 境内(隣接敷地)には、板橋区の保存樹木にも指定されている見事な銀杏(イチョウ)の大木がそびえ立ち、静かに街を見守っています。


境内を歩くと、いくつもの立派な「神輿の蔵」が目を引きます。 毎年9月に開催される例祭では、この蔵から神輿が繰り出し、イナリ通り商店街は1年で最も熱い活気に包まれるそうです。


「お祭りの時は本当に賑やかだから、よかったらぜひ来てみてね!」
店頭でいただいた温かい言葉を胸に、秋の再訪を誓いました。

周辺の旧中山道や旧川越街道沿いの商店街が今も多くの人で賑わう一方で、街道同士をバイパスする旧道の商店街(近隣の愛染通り商店街など)は、時代の波の中で難しい舵取りを迫られています。

だからこそ、いまイナリ通り商店街に残る個店の一軒一軒の灯りと、そこで交わされる人情は、私たちが大切にしていきたい地域の宝物です。お稲荷さんが見守るこの通りを、ぜひ皆さんもゆっくりと歩いてみませんか?






