【和光バイパス】変わる和光、揺れる想い。国道254号バイパス建設と地域再開発の最前線

2026年1月、埼玉県和光市。かつて静かな農地が広がっていたこの街は今、100年に一度とも言える大きな変革の真っ只中にある。首都圏の交通網を劇的に変える「国道254号和光バイパス」の建設と、それに伴う大規模な再開発事業だ。

大規模再開発が進む新倉の周辺。

和光バイパスの道路整備予定地

和光市HPより引用。

現在進められている和光バイパス(約2.4km)は、東京都板橋区よりの「笹目通り」の吹上観音前交差点から外環道「和光北IC」付を一直線に結ぶ新設路線である。

吹上観音前交差点

交通量の多い吹上観音前交差点。
吹上観音前交差点、交通量も多く事故も多い。
吹上観音前交差点から少し坂を下り下新倉方面に入っていく。

下新倉の住宅街と金泉通り

現在は左に蛇行しているが、和光バイパスはここをまっすぐ進む計画。
住宅が並ぶ金泉寺通りを横切るように和光バイパスが通る計画。

和光高校裏手から敷地を縦断する

和光高校裏手の自動車や紙業の工場が並ぶ地域を和光バイパスが通る。
和光高校を斜めに進み現在中心場があるあたりから水道通りに合流する。

水道通りから和光IC

水道通りは交通量が多い一方で一車線であることから拡幅が予定されている。
和光バイパスの終点となり、個々から和光富士見バイパスにつながる予定。

首都圏の「動脈」が繋がる期待感

和光IC近くの公園に建てられた竣工記念碑。
竣工記念碑の背面に刻まれた事業の歴史。

平成21年に99名の地権者によって設立された「和光インター地域土地区画整理組合」を軸に、日本郵便や物流最大手企業の進出、埼玉県道和光インター線の拡幅などが一体となって進んでいる。

笹目通りを通行する大型トラック、和光陸橋付近で254に合流する。

同時期に建設が進む「和光富士見バイパス」が全通すれば、川越から都心方面へのアクセスは劇的に向上する。慢性的な渋滞に悩まされてきた国道254号(川越街道)のバイパスとして、東西の交通を支える新たな「動脈」への期待は大きい。

川越街道を走るトラック。

「悪路」解消への切実な願い

道幅が狭く歩道がない水道通り。

開発の背景には、交通利便性だけでなく、地域が抱える「安全」への切実な課題がある。現在、主要な通りとして使われている「水道通り」は、大型トラックが頻繁に行き交う一方で、車道は狭く歩道もほとんど整備されていない。

水道通り周辺の死亡事故現場。

昨年11月の和光IC付近での事故や、10月に発生したキックボードに乗った小学生の死傷事故など、この通り周辺では痛ましい事故が絶えない。住民にとって、この「構造的な欠陥」を抱えた道路がバイパスとして整備されることは、文字通り命を守るための悲願でもある。

物流センターに向かう道路。

失われる学び舎、刻まれる記憶

2025年度をもって廃校となる和光高校。

しかし、開発の代償として失われるものも少なくない。バイパスのルート上に位置する埼玉県立和光高校は、2026年4月の統合・廃校が決定している。

最後となった第54回和光祭。

先日の最後の文化祭では、人気グループ「Travis Japan」がゲスト参加したテレビ撮影も行われ、華やかな賑わいを見せた。しかしその一方で、校舎を背景に静かに写真を撮る多くのOBたちの姿があった。青春を過ごした学び舎が道路の下に消えていく現実に、彼らは言葉にできない寂しさを滲ませていた。

「土」を守ってきた人々の憤り

先祖代々の土地への農家の忸怩たる想い。

さらに根深いのは、先祖代々の土地を守ってきた農家の方々の葛藤だ。区画整理に伴い、長年耕してきた農地を別の場所へ移動させられる農家も少なくない。

水道道路脇の葱畑、バイパスの拡幅予定地。

「大切に守ってきた土地、慈しんできた土をなんだと思っているのか」――。 開発という大義名分の影で、土と共に生きてきた人々にとって、農地を動かされることは自らの歴史を否定されるような痛みを伴う。たとえ代替地で農業を継続できるとしても、ある農家は絞り出すような声でこう語る。 「『こっちからあっちへ移ってくれ』と図面の上で言われても、先祖代々受け継いできたこの土を離れるのは、そんなに簡単なことではないんだ」

和光高校と崖線の間の畑は道路に。
道路建設予定地に建つ家。

寄り添う開発、未来への対話

JR板橋駅前の戦後2度目の再開発。

和光市に隣接する板橋区でも、坂本区政5期目という節目を迎え、大山、上板橋、高島平といった主要エリアでかつてない規模の再開発が加速している。戦後から時を止めたような古い街並みが、高齢化という課題に直面するなか、都市の機能を更新し、次世代へ繋ぐ「再生」の必要性は論を俟(ま)たない。

2025年下旬から道路の建設が本格化。

しかし、和光の事例が教えてくれるのは、数字や利便性だけでは測れない「住民の想い」の重さである。首都交通の要としての発展は重要だが、その陰にある喪失感や憤りにどれだけ真摯に向き合えるか。

和光市駅北口に立つ家族の像。

これからの再開発に求められるのは、古いものを壊す強引さではなく、そこに刻まれた記憶や誇りを次の世代へどう繋いでいくかという、丁寧な対話なのではないだろうか。

※現在、和光市では北口エリアにタワーマンションや商業施設が建設される再開発も並行して計画されています。

おまけ 下新倉の風景

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なりチャン

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