板橋区・大山の象徴であるハッピーロード大山商店街がいま、大きな転換期を迎えています。

かつてのアーケードの一部は撤去され、巨大な再開発ビル「クロス大山」の傍らには、新しい都市計画道路(補道)が姿を現し始めています。


そんな喧騒のすぐそばで、30年近く変わらぬ味を守り続けているのが「ごん平」です。
■ 注文を受けてから揚げる、至福のサクサク感



暖簾をくぐり、券売機で選んだのは「なにわ天ぷらそば(630円)」。 店内では、人当たりの柔らかい店主が温かく出迎えてくれます。この店最大のこだわりは、天ぷらを「注文が入ってから揚げる」スタイル。


待つこと約3分。目の前に現れた一杯は、立ち食いそばの域を超えたクオリティでした。

- 出汁: 関西風の透き通った薄味。関東特有の濃い醤油味に慣れた舌には最初優しく感じられますが、飲み進めるほどに深いコクが広がります。

- とろろ昆布: 「なにわ」のアイデンティティ。昆布の旨味がスープに溶け出し、絶妙なアクセントに。
- 天ぷら: まさに揚げたて。サクサクとした食感が、すっきりした出汁と最高のコントラストを描きます。
■ 「再開発」と共に歩んだ30年

実は、この場所を通る補道の計画は、ごん平が営業を開始した当初から存在していました。店主にとって再開発は、常に隣り合わせの日常だったのです。

しかし、ついにその時が来ようとしています。ここで興味深い、そして切実な事実に直面しました。
補償の「明暗」を分ける境界線 クロス大山やピッコロスクエアといった再開発は「区」が主体のため補償が手厚い一方、店舗の目の前を通る「補道」は「東京都」の管轄。都の補償は一定額で決まっており、同じ商店街の中でも、どの敷地にかかっているかでその後の選択肢が大きく変わってしまうといいます。
■ 変わりゆく大山の道

かつてのアーケードが空を切り取ったように無くなり、新しい道路が街を分断していく。 便利できれいな街に生まれ変わる一方で、長年この地で「なにわの味」を提供し続けてきた個人の名店が、制度の狭間で揺れている現実。


「ごん平」の優しくも深い出汁の味は、変化し続ける大山の風景の中で、どこか切なく、そして力強く記憶に刻まれました。

このサクサクの天ぷらと透き通ったスープが、どうか新しい街のどこかで続いてほしい。そう願わずにはいられない昼下がりでした。
店舗情報(2026年4月時点)

- 店名: ごん平
- 場所: ハッピーロード大山商店街内(補道予定地)
- メニュー: なにわ天ぷらそば 630円 他





