東京都は12月18日、板橋区前野町の歯科医院「医療法人社団山富会 タカシデンタルクリニック」(鈴木高志理事長、現在は廃止済み)が、生活保護受給者の診療報酬を長年にわたり不正に請求していたと発表しました。不正・不当請求の総額は約6,645万円に上り、都内の指定医療機関としては過去最大の規模となります。

発覚の端緒:一時帰国中の受給者への請求

事案が動き出したのは2024年2月、管轄の福祉事務所からの「不審な請求がある」という通報でした。 「一時帰国中のはずの外国人受給者が診療を受けていることになっている」という矛盾がきっかけとなり、都福祉局による大規模な検査が実施されました。
驚愕の手口:死亡者や入院患者の名義を捏造

2024年11月から2025年6月にかけて行われた検査により、以下のような極めて悪質な実態が判明しました。
- 架空・水増し請求: 実際には来院していない患者の診療実績を捏造。
- 対象者: 受給者計89人分。
- 異常な隠蔽: 架空請求の対象には、既に死亡している人や、他院に入院中で通院が不可能な人まで含まれていました。
- 不正額の内訳: 総額6,645万5,760円のうち、約5,000万円が完全な「架空請求」によるものでした。
行政検査前後の「廃止」と「再開業」に関する動き

同法人の対応については、その経緯に注目が集まっています。都から検査実施の通知を受けた直後の2024年10月に、一旦クリニックを「廃止」する手続きが取られていました。
しかし、その後の検査終了後、再び同地で診療が再開されたとの情報があることから、東京都は「利用者が適切な医療機関を選択する際の判断材料とする必要がある」と判断。今回の公表に至ったという異例の背景があります。
医療法人側の説明と今後の課題

今回の都の公表に対し、医療法人側は「管理が行き届かず、不正を防ぐことができなかった」と説明し、事実関係を認めています。
一方で、架空請求の対象に死亡者や入院中の患者が含まれていたという事実に照らせば、単なる事務的なミスにとどまらない、組織としての管理体制のあり方が厳しく問われることになりそうです。
考察:税金を食い物にする構造的課題
生活保護の医療扶助は全額公費で賄われるため、医療機関と受給者の間でチェック機能が働きにくい側面があります。今回のケースは、その制度の隙間を突き、社会保障制度への信頼を根本から裏切る行為です。
今後、板橋区と東京都による返還請求に加え、刑事告訴を含めた厳格な責任追及がなされるかが焦点となります。


