成増の踏切沿いに、多種多様な商品が並びいつも活気あふれる「コットンハウス」。何が出てくるかわからない宝探しのようなワクワク感を提供し続けるこの店の店主、濱中裕二さんには、板橋の衣料品史とも言える深い背景がありました。


1965年「のとや」の誕生と共に生まれた赤塚での日々

濱中裕二さんの歩みは、板橋の名店「のとや」の歴史そのものです。
父は石川県能登半島の出身(出身地から「のとや」と命名)。東京に出てきてメーカーに丁稚奉公をして修行を積み、濱中さんが生まれた1965年に一念発起して独立しました。下赤塚小学校の裏手に購入したわずか5坪の土地。そこが「のとや」の始まりであり、濱中さんの生家でもありました。
「当時は周りも畑ばかり。その小さな店舗兼住居で育ちました」

濱中さんが赤塚幼稚園に上がる1970年頃、店は商店街のビル(シバタツビル)へ、そしてさらに駅に近い20坪の土地へと移転します。

ここが現在の「のとや赤塚本店」の場所となりました。商売が大きくなるにつれ、両親は共働きで多忙を極めましたが、そんな濱中さんの面倒を我が子のように見てくれたのが、旭町のおばあちゃんでした(旭町で飲み屋さんを営んでいたご夫婦のお母さん)。
育ての親とも言えるそのおばあちゃんに連れられて歩いた成増の賑わいは、幼い濱中さんの心に刻まれました。

サッカーに情熱を注いだ学生時代と、武蔵小山での修行

地元の赤塚幼稚園、下赤塚小学校を卒業後、濱中さんはあえて学区外の赤塚第一中学校への越境進学を選びます。理由は、大好きなサッカー。部活動が盛んな環境で実力を磨いた濱中さんは、中学3年生で東京選抜に選出。高島第二中学校との試合、三菱養和との合同練習で初めて踏んだ芝生の感触は、今でも鮮明に覚えているそうです。

高校までサッカー漬けの日々を送った後、長男として家業を継ぐべく、当時「良品廉価」で飛ぶ鳥を落とす勢いだった武蔵小山のヨーカ堂に修行にいきます。本店の向かいにある分店を任せられ、4年間お店を切り盛りする中で生産余剰品や先物買いを行い、仕入れ値を抑えることで、より良い品を安く提供する「ディスカウントストア」の本質を目の当たりにします。
「ディスカウントのやり方を取り入れれば、うちももっとお客さまに喜んでもらえるようなる」


4年間の修行を経て「のとや」に戻ってきた濱中さんは、上福岡にのとやの新店舗を立ち上げるとともに、2年間で「ディスカウント」の手法を取り入れ経営を軌道に乗せました。その後、父親に呼び戻され赤塚本店に移り、2代目社長に就任。
しかし30歳の時、兄弟との経営方針の違いから、経営権を次男に譲り、一から自分の店を立ち上げる決断をしました。

独立の地に選んだ思い出の「成増」

新天地に選んだのは、旭町のおばあちゃんとの思い出の中で、いつも活気に満ちた印象があった成増でした。
店舗を探していた際、現在の物件が空いているのを見つけました。
駅前の商店街から離れており、踏切近くの必ずしも好立地とは言えない場所でしたが、濱中さんは2週間に亘り朝から晩まで物件の前に立ち、人の流れを観察し、思った以上に人通りがあるので商売になると判断しました。

しかし、意を決して物件を借りるためにオーナーである長太郎不動産さんに話に行ったところ、貸し出す予定がないと断られてしまいます。それでもあきらめずに、長太郎不動産さんの社長が濱中さんの想いに応え、快く貸してくれることになりました。こうして1995年11月、ついに「コットンハウス」が産声を上げたのです。
「今でもオープン当日に開店2時間前の8時から並んだ一番乗りのお客さまの顔はわすれない」と言います。

店名は、自然の繊維で優しい印象の「コットン」を販売するお店ということで「コットンハウス」と名付けられました。本店の「のとや」に比べると店舗面積が限られていたため、生活必需品に商品を絞り、「とにかく安くて質の良いもの」を店頭に並べることを心掛けました。
また、当時は濱中さん自身のお子さんも小さかったことから、実体験をもとに子供服を強化。当時はまだ子供服のディスカウント店が珍しかったこともあり、子育て世代のニーズに合致してよく売れたといいます。


商品との出会いは「一期一会」。仕入れは真剣勝負

現在のコットンハウスは、衣料品にとどまらない多種多様なラインナップが魅力です。コロナ禍でのマスク需要を機に、食品や生活雑貨まで扱う「何屋だか分からない、でも面白い店」へと進化しました。


「商品の仕入れは大阪まで足を延ばし、いい品があればバッタ屋さん(在庫処分品等の訳あり商品を低価格で扱う問屋)との取引も行います。商品は一期一会。その場の判断で買わないと次はない。お客さまの顔を浮かべながらの真剣勝負です」

仕入れてきた商品をいち早くお客さまに届けたいという想いから、コットンハウスのSNSは毎日新着商品が投稿されます。

最近では、SNSで告知すると瞬く間に完売する「ボンボンドロップシール」など、子供たちの流行にも敏感です。

シールの大流行が始まり各店舗品薄になってきた2025年10月頃に店頭にシールを並べると小さなお子さんが「こんなに沢山シールがある!コットンハウス大好き!」という子供がバックヤードにいた濱中さんの耳にも聞こえてきたと言います。そんなお客様の喜ぶ声が濱中さんの何よりの原動力です。
地域を守る消防団の責任者として

お店の隣には、志村消防団第10分団の建物がありました。商売を始めて2年目、消防団の方から声を掛けてもらったことをきっかけに消防団活動に身を投じることになりました。

あれから27年、今では責任者として地域防災の要を担っています。月1,2回の訓練を欠かさず、地域の安全を守り続けている濱中さんは、「現在、一緒に活動する団員を募集中です」と語ります。
街に灯す、ワクワクという名の宝物

「商売は、儲けようと思ったら売れない。少しでも良い品を仕入れてきて、少しでも安く提供して、お客さまに喜んでもらう。ただその積み重ねなんです。」
そう語る濱中さんの目は、キラキラと輝きます。毎月自ら大阪へ足を運び、長年築き上げた人脈と直感で掘り出してくる商品は、単なる「物」ではありません。それは、濱中さんがお客さまの笑顔を想像しながら勝ち取ってきた、一期一会の「宝物」です。

店頭に所狭しと並ぶ色とりどりのシール、山積みの生活必需品、さらに思わず声が出るような目玉商品。「今日は何があるかな?」とお店を覗き込む瞬間の、お客さまが抱くワクワク感こそが、濱中さんが30年間大切にしてきたこと。

地域を愛し、消防団として街の安全を見守りながら、濱中さんは今日も最高の一品を探し続けます。コットンハウスの軒先から溢れ出す「驚き」と「喜び」は、これからも成増の街を明るく、そして賑やかに照らし続けていくことでしょう。
コットンハウスの店舗概要

| 名称 | コットンハウス |
| 創業 | 1995年11月 |
| 住所 | 〒175-0094 東京都板橋区成増2-23-1 |
| アクセス | ・東京メトロ有楽町線・副都心線「地下鉄成増駅」5番出口より徒歩2分 ・東武東上線「成増駅」南口より徒歩3分 |
| 電話番号 | 03-3977-8286 |
| 営業時間 | 10:00 〜 19:00 |
| リンク | HP、Line公式、Instagram |
【志村消防団第10分団からのお知らせ】

現在、濱中さんが責任者を務める消防団では、新しい団員を募集しています。 成増という地元を一緒に守っていきませんか?
- 準公務員扱いとなり、訓練や出動の際には給与が支給されます。
- 月に1〜2回の練習など、仕事や私生活と両立しながら活動いただけます。

「地域のために何かしたい」「大切な街を守りたい」という志をお持ちの方、ぜひ東京消防庁もしくはコットンハウスの濱中さんまで、お気軽にお声がけください!

