【銭湯@成増】成増北口の歴史を見守る銭湯「初音」へ。かつてピアゴや西遊記の場所にあった“マーケット”の時代とは?

2026年5月、新緑の風が心地よい季節。成増駅北口を出て、どこか懐かしい佇まいを残す成増北口商店街を歩いていきました。

商店街の中腹、昭和39(1964)年頃の創業から半世紀以上にわたってこの街の移り変わりを見守り続けてきた銭湯があります。その名は「初音(はつね)」。

今回は、心地よい地下水のお湯のレポートとともに、店主の方から伺った「かつての北口商店街の驚くべき賑わい」、そして今を生き抜く銭湯のリアルな現状についてお届けします。

階段を上ると、天使が迎える癒やしの空間

ビル型の建物に構える「初音」。半地下部分にはコインランドリーがあり、銭湯の入り口は階段を上った2階にあります。

階段を一段ずつ上って2階へ進むとそこが入り口となっており、なんとも美しい天使の壁画が目に飛び込んできます。

どこか神聖で、それでいてホッとする優しいビジュアルが、訪れる人々を温かく出迎えてくれます。

板橋区浴場組合HPより引用。

広々とした更衣室で服を脱ぎ、いざ浴室へ向かいます。

設備充実!自慢の「地下水」が体に染み渡る

板橋区浴場組合HPより引用。

初音のお風呂は、地下から引き上げている豊富な地下水を使用しているのが大きな特徴です。水質が非常に柔らかく、体の芯からじんわりと温まる感覚を味わえます。

浴室にはジェット、電気風呂、サウナ、そして火照った体をクールダウンさせてくれる水風呂まで、充実した設備が揃っています。さらに取材時は薬湯も実施されており、誰もが楽しく気持ちよく入浴できる工夫が凝らされています。

板橋区浴場組合HPより引用。
  • 薬湯(30℃後半): 子どもでも熱がらずにすんなり入れる、絶妙なぬるめの温度設定。親子連れでも安心してゆっくり浸かれます。
  • ジャグジー(約43℃): 一転して、こちらはガツンと熱めのスタイル!地下水のまろやかさと力強い刺激が相まって、日頃の疲れが一気に吹き飛びます。

湯上がりは受付の横にあるソファースペースへ。テレビをのんびり眺めながら、冷たい飲み物をぐっと飲み干して休憩。これぞ日常のなかの、ちょっとした最高に幸せな時間です。

時代を生き抜く「経営努力」と、営業時間の変更

一見するといつもの穏やかな銭湯の風景ですが、昨今の社会情勢の波はここにも押し寄せています。

最近のエネルギー価格の高騰は、全国の銭湯と同様に「初音」の経営をも直撃しています。地下水を引き上げるポンプ、そしてお湯をコンスタントに温めるボイラーなど、銭湯を運営するには膨大なエネルギーを必要とするためです。

こうした背景もあり、2026年6月から営業時間が「15時から」から「16時から」へと変更になりました。お湯のクオリティを落とさず、街の大切な憩いの場を未来へ残していくための苦渋の決断であり、切実な経営努力の現れでもあります。

店主が語る歴史――「初音」のルーツと往年の大賑わい

板橋区浴場組合より引用。

少しだけお話を伺うことができた店主の言葉からは、現在の商店街の姿からは想像もつかないような、昭和の成増のダイナミックな歴史が溢れていました。

「初音」という名前に隠されたルーツ

そもそもなぜ、この銭湯は「初音」という名前なのでしょうか。 もともと成増の地で料亭や旅館を営んでいた「初音さん」がルーツだそう。現在のオーナー側がその事業を引き取った後も、地域に根差したその看板と歴史を大切に守り続け、今に繋いでいるのです。

ピアゴや西遊記の場所は、かつて「巨大なマーケット」だった

店主が振り返るかつての北口商店街は、買い物客で溢れかえる一大商業エリアでした。

現在、ミニピアゴがある場所や、中華料理の「西遊記」がある場所。あそこには昔、大きな「マーケット」が存在していたといいます。そこにお魚屋さん、新鮮な野菜が並ぶ八百屋さん、お肉屋さんなどが一堂に集まっており、夕方にもなれば、夕食の買い出しに来る地元の人々で賑わっていました。

店内に大切に保管されている当時の写真を見せてもらうと、そこには見事な七夕の飾り付けが施され、活気に満ちた姿が鮮明に写し出されていました。

変わりゆく街の中で、変わらない温もりを

現在の成増北口商店街は、当時と比べるとお店もまばらになり、シャッターを閉めたままの店舗も少なくありません。時代の波とともに、街の風景は少しずつ静かなものへと移り変わっています。

しかし、「初音」へ足を踏み入れれば、そこには今も昔も変わらない、温かい湯気と地域の人々の笑顔があります。

昭和の成増の活気に思いを馳せ、銭湯を維持する店主の想いに感謝しながら、極上の地下水に身を委ねてみる。そんな歴史と今を感じる銭湯時間を、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

【銭湯 初音(初音湯)】

  • 創業: 昭和39(1964)年頃
  • アクセス: 東武東上線「成増駅」北口から成増北口商店街沿い・中腹(ビル2階)
  • 営業時間: 16:00〜(2026年6月15時から16時開始に変更)
  • 主な設備: 薬湯、ジャグジー、ジェット、電気風呂、サウナ、水風呂、コインランドリー(半地下)

この記事を書いた人

なりチャン

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