【創業100年】満州やソウルから引き上げて戦後の闇市にオープンした歴史を持つ「板橋書店」に行ってきました。

板橋駅近く、再開発が進む街並みの中で、ひときわ静かな存在感を放つ場所があります。大正から昭和、平成、そして令和へ。日本の近代史とともに歩んできた古書の聖地「板橋書店」を訪ねました。

質・量ともに圧倒的。本好きを魅了する「25坪の宇宙」

店内に一歩足を踏み入れると、約25坪という古本屋としては非常にゆとりのある空間に、天井近くまで届く本棚が並びます。そこにぎっしりと陳列された古書の数は、質・量ともに東京北部でトップクラスと称されるのも頷けます。

特定のジャンルに偏ることなく、歴史、思想、文学、映画、さらには懐かしの漫画まで。ネット販売を行っていないため、ここにあるのは「実際に足を運んだ人だけが出会える本」ばかり。まさに掘り出し物の宝庫です。

今回は「板橋の歴史資料」を探しに伺ったところ、店員さんが歴史関連のコーナーを案内してくださいました。そこで見つけたのが『成増一丁目遺跡の発掘調査レポート』。昭和54年、現在の成増ハイツ周辺で行われた調査の記録です。五十軒以上の竪穴式住居跡が見つかり、その多くが弥生時代末期のものだったという事実に、足元の地面の下に眠る悠久の歴史に思いを馳せました。

激動の近代史を体現する、板橋書店の歩み

店内には書店の歩みを記した掲示があり、現在のオーナー様からも貴重なお話を伺うことができました。そこには、一人の書店人が大陸を渡り歩き、戦後の混乱期を生き抜いた壮絶な物語がありました。

【板橋書店の年譜】

  • 1916年: 創業者・加藤澄男氏が徳島に生まれる。15歳で大阪の書店に就職後、すぐに京城(現ソウル)へ。
  • 1920年: ソウルにて「一誠堂書店」を独立開業。
  • 1927年: 帰国後、神戸で「文芸書店」を開店。
  • 1936年: 再び朝鮮へ渡り、現在の北朝鮮にあたる新義州で「新義州書店」を開業。
  • 1946年: 終戦による引き揚げ。最後の引き揚げ船で命からがら佐世保に帰還。
  • 1948年: 板橋の親戚を頼り上京。当時「闇市」ができ始めていた板橋駅前の広大な空き地に、バラック小屋の「板橋書店」を開業。
  • 1950年: 駅前の区画整理(1回目)により移転。
  • 1978年: 現在の場所(加藤ビル)へ移転。

現在進められている駅前の再開発は、戦後の闇市から始まったこの街にとって「2度目の大きな転換期」といえます。創業当時は化粧品の小売も兼業されていたというお話からは、戦後の動乱期を必死に生き抜こうとした力強さが伝わってきます。

歴史の「目撃者」としての書店

板橋書店の歴史は、単なる一書店の記録にとどまりません。日本の植民地時代から戦後復興、そして現代の都市開発まで、常に時代の最前線を見守ってきました。このあたりの事情は、沖田信悦氏の著書『植民地時代の古本屋たち』にも詳しく記されています。

Amazonより引用。

今、板橋駅前では古い建物が取り壊され、新しい景色が作られています。しかし、板橋書店の棚に並ぶ一冊一冊や、店主様が語ってくださった物語の中には、消えることのないこの街の「記憶」が刻まれています。

新しくなった駅周辺を歩くとき、ふとこの書店の扉を叩いてみてください。そこには、あなたがまだ知らない、深く豊かな「板橋」が待っているはずです。

板橋書店の概要

店名板橋書店
住所〒173-0004 東京都板橋区板橋1丁目49−11
電話番号03-3961-1310
営業時間月曜日~土曜日: 10時30分~18時30分
定休日日曜日

お役立ちリンク

仲宿にある坪井書店さんは板橋書店さんから独立したお店だそうです。

この記事を書いた人

なりチャン

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