2025年12月、大規模な再開発事業が進行中の東武東上線・上板橋駅の南口エリアを巡りました。巨大なクレーンが空を突き、近代的なタワーマンションの建設が進む一方で、駅の構造変化が既存の商店街や街の歩き方にどのような影響を及ぼしているのか。その現在地を定点観測の視点で記録します。

■ 階段位置の変更が招いた「商店街の動線」の変化
今、上板橋南口で最も顕著な変化として挙げられるのは、駅階段の移設に伴う「人の流れ」の変容です。

従前は商店街を通り抜け、そのまま駅の階段へと進むのが街の日常的な風景でしたが、階段位置が変わったことで人々の動線は劇的に変化しました。最近では、商店街を迂回するように駅前のロータリー側へと直接出てから駅に向かうルートを選ぶ人が増えています。

この影響を象徴しているのが、上板南口銀座商店街の「石田屋」さんの前を走る通りです。かつては駅の階段へと続くメインルートとして賑わっていましたが、現在は以前に比べて人通りが減ってしまったという切実な声が聞かれます。


■ 旧駅前エリアの苦境と、そこに芽吹く新たな店舗


さらに大きな打撃を受けているのが、かつての改札を出て南口の階段を降りた正面に位置していたお店の一角です。


「餃子の王将」や「ドトールコーヒー」が並び、道の向かい側には「さかなや成吉」さんが構えるこのエリアは、駅のメイン動線から外れたことでめっきりと人が減ってしまいました。


長年街を見守ってきた「かさとバック ふくはら」さんがお店を閉じるなど、再開発のプロセスにおける構造的な変化が店舗経営に色濃く影響しています。


しかし、その一方で新しい芽吹きも確認できました。「さかなや成吉」さんの2階には、2025年11月に居酒屋「みと」さんがオープンしており、激動の過渡期にあっても、新しい歴史を刻もうとする動きが始まっています。
■ 「7のひろば」が担う、未来の駅前広場のリハーサル

商店街を東へと折れ、駅の仮設階段へと続く道を進むと、そこには将来的に大きなロータリーとなる予定の広大な工事区域が広がっています。

その一角で、現在実験的に地域の方々が活動を続けているのが「7のひろば」です。これは板橋区の緑化プロジェクト「そだててつくろう かみいたねプロジェクト」の一環として、再開発工事中の空き地を活用して整備されました。

「7の広場」は単なる空き地利用に留まらず、将来の駅前広場に植栽する植物をどのように育て、どう維持管理していくかを住民自らが実験・シミュレーションする場となっており、殺風景になりがちな工事現場の中で、地域コミュニティを繋ぎ止める重要な拠点となっています。
■ 2028年の完成へ、加速するタワーマンション建設とインフラ整備

視線を駅前に移せば、林立する巨大なクレーンの下で、住友不動産によるタワーマンション「シティタワーズ上板橋イースト/セントラル」の建設が着々と進行しています。

約1.7ヘクタールという広大なエリアを刷新するこのプロジェクトは、上板橋を「住・商・緑」が融合した駅直結の街へと進化させる計画です。

駅とペデストリアンデッキで直結される「イースト」棟の誕生、マンション低層階への商業施設の誘致、そして約3,900㎡の交通広場の整備。これらに加え、駅前から川越街道(国道254号)までを直線で結ぶ幅員16mの道路が新設されることで、車やバスのアクセス利便性も劇的に向上します。

■ 観測のまとめ:変貌する街の記憶を記録し続ける

2028年の完成へ向けて、上板橋は今、まさに大きな脱皮の途中にあります。

便利で近代的な未来の姿が輪郭を現していく傍らで、動線の変化に戸惑う既存商店街の姿や、仮設階段を通る人々の足音。この過渡期ならではの景色を、これからも定点観測として記録し続けたいと思います。




