板橋宿不動通り商店街の入り口。古い宿場町の面影を残すこの場所に、白壁と瓦屋根が凛と映える「蔵」を模した佇まいの店がある。1979年創業、『喜多方屋 本店』だ。


故郷への想いが、一台の屋台から始まった

店主の斉藤さんは福島県喜多方市の出身。 「東京でも故郷のあの味が食べたい」という切実な想いから、自ら屋台を引いたのがすべての始まりだったという。

かつては昼間にトラックのハンドルを握り、夜は高島平で屋台を営む二足のわらじで、この味を守り抜いてきた。

1975年、NHK『新日本紀行』で紹介されたことを機に、日本三大ラーメンの一つとして全国区となった「喜多方ラーメン」。その看板を東京でいち早く掲げた先駆者の歴史が、ここには息づいている。
活気あふれる「町の定食屋」の心地よさ


開店とほぼ同時に暖簾をくぐったが、店内はすでに満席。 テレビが1台置かれ、小上がりもある空間は、ラーメン屋というよりはどこか懐かしい「町の定食屋」のような温もりがある。


サービスセットの誘惑に負け、今回は「喜多方ラーメンセット(半焼き飯付)」を注文。カウンターに案内されると、目の前には高く積まれた「にんにくの山」が。これから届く一杯への期待感に、自然と食欲が刺激される。


職人の背中と、スープの深み


厨房では、ご主人が今も現役で中華鍋を振るっている。 お元気そうな姿に安堵するが、ふと見えた腰のコルセットに胸が痛む。ここの「ニラレバ炒め」は絶品だが、重い鍋を振る負担を考えると、一ファンとしてはどうしても注文を遠慮してしまう。少しでもお店が長く続いて欲しい。

運ばれてきたラーメンに、まずはレンゲを差し込む。 スープはどこまでもさっぱりとしていて、優しい香りが鼻を抜ける。しかし、いざ啜ってみれば、醤油ベースの芳醇で濃い香りが後からぐいぐいと追いかけてくる。 この多層的な味わいこそ、長年愛されてきた真髄だ。

伝統を啜る贅沢


昔ながらの平打ち縮れ麺が、その深いスープをしっかりと持ち上げる。 店を出て振り返ると、蔵造りの建物が板橋宿の風景に驚くほどしっくりと馴染んでいた。

故郷を想う一人の情熱から始まった一杯は、いまやこの街になくてはならない「心の味」となっている。




| 住所 | 東京都板橋区板橋3-27-3 |
| アクセス | 都営三田線「板橋区役所前駅」徒歩5分 東武東上線「下板橋駅」徒歩7分 |
| 営業時間 | 11:30 – 15:00 (平日のランチタイム営業) |
| 定休日 | 土曜日・日曜日・祝日 |
| 席構成 | カウンター席、テーブル席、小上がり |
おまけ

外に出ると50周年の文字がありました。1979年創業と聞いていますが、もしかしたら屋台の時代を入れるともう少し長いのかもしれませんね。





