2026年6月3日、元東京都議会議員選挙候補者で地域団体「asITA25」責任者の船本優月氏(34)が記者会見を開き、2027年5月に任期満了を迎える板橋区長選挙へ無所属で立候補することを表明しました。
合わせて、自身が率いる地域団体から次期区議選への候補者擁立を目指す方針も明らかにし、来年の統一地方選挙に向けた動きが早くも本格化しています。

記事のポイント
- 最速の出馬表明: 政策調整や区民への周知期間を確保するため、異例の1年前倒しで表明。
- 高島平・大山の再開発に「再考」の視点: 現区政を一定評価しつつも、大規模再開発には独自の土木技術者目線で切り込む。
- 「投票率65%」の挑戦: 地域団体「asITA25」を軸に、政党や思想を超えた新しい地域政治のロールモデルを提唱。
会見詳報:吃音の症状を公表、手話での挨拶からスタート

台風が接近する足元の悪い中行われた記者会見の冒頭、船本氏は板橋区主催の講習で勉強中だという手話を用いて挨拶を行いました。また、自身に吃音(きつおん)の症状があることを公表。
「ことばを発することが苦手で、最初に『ま~』などと勢いをつけると話しやすくなる」と率直に語り、自身の個性をオープンにしながら丁寧な対話に臨む姿勢を示しました。

船本氏は広島県東広島市出身の34歳。東京理科大学大学院で土木工学を専攻したのち、東京電力HD株式会社に勤務。現在は板橋区赤塚に在住し、板橋歴は16年を数えます。区長選への挑戦に伴い、今年8月末で同社を退社する予定です。
退社後は「介護や福祉、保育、教育など、これまで自分が関わったことのない区内の現場で実際に働き、区民の生の声をヒアリングしたい」と、徹底した現場主義への意欲を燃やしています。
出馬の背景:「私に投票してくれとは言わない」投票率65%への高い壁

2025年の都議選(板橋区選挙区)に「再生の道」から出馬し、14,096票を集めるも落選した船本氏。その後同党を離党し、現在は地域団体「asITA25(明日の板橋を考える会)」の責任者として活動しています。
早期に出馬を表明した理由について、船本氏は以下の3点を挙げました。
- 政策決定に向けた各所との丁寧な調整期間の確保
- 議会決議前に、区政の方向性が変わる可能性(選択肢)を有権者に提示すること
- 早期の意識付けによる、区民の区政への関心向上

「居酒屋で選挙の話をすると『なんとなく選挙に行っていない』という人が本当に多い。でも『自分が出馬した』と伝えると『それなら投票したのに』と言ってくれる。まずは関心を持ってもらうことが大事。私に投票してくれとは言いません。一人ひとりが考えて投票すれば、自ずと結果はついてくる」
前回の板橋区議選の投票率44.19%に対し、船本氏が掲げる目標は「65%」。高いハードルながらも、区民が主役となる政治への転換を本気で目指しています。
注目される政策:5期20年の「坂本区政」を評価しつつも、再開発には異議

5期目を迎えている現職・坂本健区長の区政運営については、「ずっと板橋に住んできて困ったことがなく、生活を守ってくれた。一定の評価をしている」と言及。基本路線をガラリと変えるつもりはないとしながらも、「安全牌(アンパイ)を取りにいっている印象もある。もっと区民や区議の声を反映できるはず」と指摘しました。

特に熱弁を振るったのが、今年度に基本計画の策定が予定されている「高島平の再開発」です。
大学院で土木を学んだ技術者の視点から、現在の高島平団地について「耐用年数の観点から建て替えは必須」としつつ、その中身については一石を投じました。 「高島平はかつて日本経済の発展を支えた地の一つ。今度の再開発も、日本経済の人口減少を見据えた『人が来やすく、出ていきやすい循環型の街』として、国や都とも連携した将来を見据えた再開発にするべき。誰のため、何のための再開発かを再考し、内容によっては大きな方向転換を打ち出す」

また、東武東上線大山駅周辺の大規模再開発についても、「70年前の道路計画(災害対策・渋滞緩和)をベースにしており、中心にある商店街が分断されてしまう。土地買収も100%ではない中で、本当にその場所でなければいけなかったのかを含め、再検討の余地がある」と語りました。
特定の既成政党からの推薦は受けない方針(無所属)ですが、「他党からの応援や連携は否定しない」とし、近隣の練馬区・北区・和光市などの首長とも柔軟に連携していきたい構えです。
地域団体「asITA25」から区議候補を擁立へ

会見のもう一つの柱となったのが、船本氏が責任者を務める地域団体「asITA25」の動向です。
現在37名のメンバーが所属する同団体は、ゴミ拾いやランニングチーム結成など「気軽に政治参加を楽しむ」ことをコンセプトに活動中。実際に、メンバー発議で「高島平緑地帯のカラスによるゴミ散乱問題」の提言書を現職区議に提出し、区によるネット設置・状況改善へと繋げた実績を持ちます。
船本氏は、こうした「区民の声を区政に反映する区議の重要性」を広く伝えるため、次期区議選において「asITA25から区議会議員メンバーを輩出する」と宣言しました。
現在のメンバーや現職議員、一般の板橋区民にも広く参加を呼びかけ、政党や思想の垣根を越えた「新しい地域政治のロールモデル」を構築したいとしています。
【成増・赤塚エリアの視点】「トカイナカ」の魅力を次世代へ

地元メディア(成増エリア)からの「これまでの活動における困難や、次世代へ残したい板橋の魅力」についての質問に対し、船本氏は笑顔で次のように答えました。
「私自身に困難や葛藤はなかった。むしろ、好き勝手やっている私を前向きに支え、一緒に動いてくれたasITA25のメンバーたちに感謝している」

また、自身が計16年間暮らしてきた成増(8年)・赤塚(8年)への愛着を込めて、街の未来像を語りました。 「板橋の魅力は、住んでいる人がみんな板橋を大好きなこと。23区でありながら、赤塚植物園のような豊かな緑があり、徒歩数分で埼玉に行けるような『トカイナカ』的な住みやすさがある。5年後、10年後の再開発を経ても、子どもたちが『板橋にいてよかった』と思えるような、人で育っていく魅力的な街を残していきたい」
取材を終えて(記者メモ)
来年5月の選挙に向け、現職・坂本区長の動向(6選出馬か後継指名か)、また返り咲きを果たした下村博文衆議院議員や河野ゆうき都議ら自民党現体制の出方も含め、板橋区の政治地図は一気に加速します。
公約の詳細や「東京23区で板橋区を1位にする3つの項目」の具体策は今後の発表となりますが、34歳という若さと土木技術者としての知見、そして「地域の想い」を巻き込む新しいスタイルの選挙戦が、停滞気味な地方政治にどのような風を吹き込むのか。2027年統一地方選に向け、板橋区から目が離せません。











